最小値=最大?

スラマッマラム N.C.です。

 よく、部品のデータシートには最小値、標準値、最大値が書かれています。パワーMOSFETのデータシートにも当然あります。
ここでは、ゲート閾値電圧の最大値・最小値と、Qg特性のいやな話をしましょう。めんどうなので、Nチャンネルのものを題材にします。
Qg特性は、スイッチング時間を計算するのに必要です。同じ型番の部品でも、特性にはバラつきがあるため、スイッチングに要する時間も変わってきます。すると、重要になってくるのは、最大でもどの程度の時間がかかるのかということです。素子の特性をドンピシャで知るには、一つ一つ実測するしかありません。どんなにお金と時間を懸けてもいいから最高のものを一つだけ作るのであればそれでいいかもしれません。しかし、生産の現場や、趣味で電子回路を作る場面で、そんなことはしていられません。そうすると必要なのは、「最大(または最小)でもこうなる」というのを知ることです。スイッチング時間の場合、最大でどれだけの時間がかかるのかを知る必要があります。
 FETがONするまでの時間は、閾値電圧が高ければ高いほど長くなります。つまり、閾値電圧が最大の場合がON時間が最大の場合です。
 また、ONがほぼ完了するのはゲート電圧がミラー電圧(Qg特性で、平らになっている部分の電圧)に到達するときなので、ミラー電圧が高いほどON時間は長くなります。そして、ミラー電圧はドレイン電流が大きいほど高くなります。
このような理由から、データシートに記載されているQg特性は、閾値が最大のものに、許容される最大のドレイン電流を流すという条件で測定されたものです。
 「なんだ、いやな話なんかないじゃないか。難しいこと考えなくても簡単にスイッチング時間の最大値を見積もれるじゃん。」と、思ったあなたはQgの罠にはまっています。ON時間はそれで構いませんが、OFF時間はどうでしょうか。
OFFする時の動作を考えてみましょう。ゲート電圧が高い状態から下がってきます。あるところでミラー領域に入ります。まだOFFしません。さらにゲート電荷を放電していき、ミラー領域を抜ける直前から、やっとOFFが始まります。そして、閾値電圧を下回ったところでOFFが完了します。気が付きましたか?OFF時間は、ミラー電圧が低いほど、閾値電圧が低いほど長くなるのです。つまり、ドレイン電流が0A、閾値電圧が最小値の時、OFF時間は最大になってしまいます。(これがこの記事のタイトルの意味です)
???:「ずっと騙していたのね?」
Qg:「騙すということ自体理解に苦しむね。ちゃんと有益な情報を与えているじゃないか。それとも1から10まですべての情報を示さないといけないのかい?情報をうのみにするだけ、人間はいつもそうだ。」
(すみません、調子に乗りました)

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