フォトカプラでスイッチング 第1話

スラマッマラム N.C.です。

 フォトカプラとは、LEDとフォトトランジスタが中に入っている素子で、一つの基盤上で、電気的に絶縁された回路間での信号伝達に使われます。なぜそのような部品が必要か説明します。モータドライバでは、ロジック回路と、パワー回路が混在してしまいます。パワー回路からまき散らされるノイズは非常に大きく、ロジック回路を簡単に誤動作させます。そのため、両者の接点はできるだけ少なくする必要があります。そこで、信号を光で伝達できるフォトカプラという素子が威力を発揮するのです。ただし、ここで扱う信号はディジタル信号のみとします。
 さて、そのフォトカプラですが、使い方に注意しないと信号の形を大きく変えてしまいます。フォトカプラを使うときの典型的な回路は図1のような回路でしょう。

図1:テスト回路

 これを御覧のあなたなら、図1中のRはいくらにしますか?もしくはどのように決定しますか?Rの値によって結果には天と地との差ができてしまいます。
まずは、R=1kΩにしてみました。TLP521のVce-Ic特性から、このぐらいの抵抗にすればVoutをほぼ0から5Vまでいっぱいに振ることができます。これで問題ないでしょうか?VinとVoutをオシロスコープで観測した結果を見てみましょう。図3の緑の線を見てください。信号の立下りがVin(赤い線)に比べてかなり遅れてしまいました。これは、少数キャリアの蓄積が起こってしまったためで、普通のバイポーラトランジスタをスイッチとして使うとき、飽和領域でどうさせたときに起きる現象と同様のものと考えられます。実際、フォトカプラでも蓄積遅延時間と呼ばれています。これでは、信号のデューティ比が(周波数によりますが)変化してしまいます。
 どうすればこの蓄積遅延時間を解消できるでしょうか。普通のバイポーラトランジスタなら、スピードアップコンデンサをつけることで蓄積遅延時間を解消することができます。しかし、フォトカプラでは、ベース電極がないため、そもそもその方法は取れません。そうなると、動作点が飽和領域に被らないようにする必要があります。そこで、R=470Ωにしました。こうしたときの負荷線をデータシートのVCE-IC特性に引けば、図2から分かるように、飽和領域を外れてくれます。この時の波形が、図3中の黄色の線です。蓄積遅延時間は解消されました。それでも、立ち上がりと立下りはなまっていますが、どちらも同じくらい遅れるので信号の形への影響はあまりありません。しかし、High状態の出力電圧が低下してしまうことには注意が必要です。
[caption id=”attachment_1458″ align=”alignnone” width=”478″ caption=”図2:R=470Ωでの動作点(TLP521のデータシートに負荷線を引いたもの)
IF=5mAのとき赤丸の点が動作点になります。IF=5mAの曲線のうちVCE

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