ショットキバリアダイオード(SBD)の実験1

スラマッマラムー N.C.です。
この記事を目にする方の中には、本サークルへの入部を考えていらっしゃる方もいるかもしれません。この記事の内容が分からなくても全く問題はありません。私は現在4年生ですが、1年生の時にはさっぱりでした。(今でも微妙ですが・・・)
では、本題に入ります。

注意:この記事の内容を信用するか否かは、自己責任でお願いいたします。また、間違い等があればコメントにてご指摘ください。

この記事に関連して、「遅延回路に適したダイオードとは?」も参照してください。

1,はじめに
Hブリッジで双方向ドライバを構成するときには、上下のFETが同時にONになることを防ぐために遅延回路(図1)を挟みます。SBDを含め、ダイオードは矢印方向の逆方向には電流を流さないはずですが、入力電圧を0Vから5Vに増やしたときに一瞬ではありますが逆方向に比較的大きな電流が流れます。これは、空乏層領域が広がるためです。もしもこの電流でコンデンサが充電されてしまうと遅延回路としての効果が減少してしまう可能性があります。そこで、データシートをもとにどの程度の電荷が通過するのかを計算する方法を考案し、その結果がどの程度正しいかを検証する実験を行いました。

図1:遅延回路

2,SBDに入力することになる電荷量の計算
多くのデータシートには逆バイアス時の接合容量のカーブが記載されています。この接合容量は、微分容量であることに注意が必要です。微分容量とはバイアスを増やしていったときに入力する電荷の総量をバイアス電圧で微分したもの(dQ/dV)で、ちょっとだけバイアスを増やしたときにどれだけの電荷が新たに入力されるかを表す値です。(これは、直流バイアスに高周波の微小な交流電圧をのせて、その時に流れる電流を測ることで計測されます。したがって、データシートには何Hzで測った結果なのかということが書かれています。)
従って、バイアス0Vの状態から逆バイアスとしてVH[V]を印加したときに通過する電荷量は以下のように計算できます。

つまり、データシートの記載されているC-Vカーブを積分してやればいいわけです。ただし、たいていは対数グラフになっているため、面積を求める方法は使えず、エクセル等にグラフから読み取った数値を入力して、数値計算することになります。この方法で1N5818について計算した結果は、
Q=630[pC]
でした。

3,実験方法
図2のテスト回路の入力電圧とコンデンサの電圧をオシロスコープでモニターしました。

図2:テスト回路

4, 実験結果
入力電圧Vinとコンデンサの電圧Vcの波形は図3のようになりました。Vinが立ち上がった直後にVc=0.32Vになりました。これがスイッチング時にSBDを通過した電荷がコンデンサに充電されたことにより、コンデンサに生じた電圧です。C=1.0nFであったため、320nCの電荷が通過したことになります。
そのあとだらだらとVcが上昇しているのは逆方向の漏れ電流によるものです。傾きとCの大きさから電流を計算すると、1.5uAであったとわかります。実際の遅延回路(図1)では、この漏れ電流の影響よりも、並列の抵抗を通して流れる電流の方が十分大きいので影響はありません。

図3:実験結果(VinとVcは縦軸のスケールが違うことに注意)

5,考察
計算値:630pC
実験値:320pC
を比較すると、計算値は実験値のおよそ2倍です。しかし、(ほかのダイオードでも試す必要はありますが、)桁があっているので見積もりとしてはそこそこいい精度なのではないかと思います。計算方法はとりあえず正しいと判断できそうです。
また、ある小信号用のSBDについて同様の方法で計算したところ、50pCとなりました。つまり、小信号用のものを選べば、スイッチングの瞬間にコンデンサに充電されてしまう電荷は小さくてすみ、遅延回路の動作に与える影響は小さくなると考えられます。したがって、遅延回路を設計する際は
・小信号用のSBDを採用する
・コンデンサの容量は大きくする(CR時定数の条件がシビアな場合は、入力電荷量を計算し、結果に応じて考える必要あり)
といったことに注意する必要があることが分かります。

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